そしてわたしの顔を見た瞬間、安心したようにホッと息を吐く。


「良かった……まだいた……」


その姿は、まるでわたしを探しに走ってきたかのように見えた。


「なんで……」


わたしをからかっただけなんじゃないの?

騙したんでしょう?

わかってるから、別にいいのに。

なんでそんなに走ってきたの?


「本当、ごめん。あの後職員室行ったけど山田いなかったから、保健室で寝てたら寝過ごしちまって……ついさっき起きて慌てて来たんだ」

「え……」

「自分から頼んでおいて遅れるとか最低だよな。本当ごめん」

「そう、だったんですか……」


なんだ、騙されてたわけじゃなかったのか……。

わたしもホッとして、なんだか泣いてしまいそうだ。


「俺にキレてもう帰ったかと思ったんだけど、白咲さんって真面目なタイプだろ?もしかしたらって思って……本当、ごめん」

「わたしは別に……でも、川上くん来なかったから……。騙されたかと思って……」

「騙された?なんで」


なんで?と聞かれるとは思っていなくて、


「え、いや、あの」


としどろもどろになってしまう。


あなたの悪い噂を知っているからです、って?


そんなこと言えるわけないじゃないか。

何か口を開けば全部失礼なことを言ってしまいそうで、でも何も言わないのも失礼な気がして必死に言葉を探す。

あわあわとするわたしに、川上くんは急かすでもなく真っ直ぐにわたしに視線を送ってきて。

次第に顔が真っ赤に染まっていく。