昼休みの出来事から数時間後。

あっという間にやってきた放課後に、わたしは心臓をバクバクさせながら教科書をリュックにしまう。

ちらりと視線を教室の後ろの方に向けると、川上くんの席は空っぽ。


確か今日の放課後からって言ってたよね……?


一人、また一人と帰っていくクラスメイトたち。

わたしはそれを無言で見送りつつ、川上くんが来るのを待つ。

窓の外はまだカラッとした暑さが続いているようで、そのジリジリとした日差しを見ているだけで暑い。


「……まだかなあ……」


ふと漏れ出た声に、返事は無い。

結局、その後三十分ほど待ってみた。

だけど、川上くんは一向に現れない。


……もしかして、騙された?


友だちがいないわたしにとって、川上くんは先生以外で久しぶりに会話した人だった。

悪い噂が絶えない人だけど、久しぶりにまともな会話ができて嬉しかった。

あの笑顔を、もう一度見てみたい。

そんな風に思ってしまった。

わたしの真っ赤な顔を見ても、馬鹿にしたりしなかった人。

それが嬉しくて舞い上がってしまったから、バチが当たったのかな……。


「……なんか、バカみたい」


あんな口約束で、律儀に一人で待っているわたし。

そんな自分の惨めな姿が悔しくて、もう帰ろうと立ち上がる。

そのまま教室を出ようとした時。


「──白咲さん!?まだいる!?」

「え……かわかみ、くん」


汗だくで息を切らした川上くんが、走ってやってきた。