「マジかよ……それは想定外だったわ……中三から本気出せば余裕だと思ってたのに……」


その自信はどこからやってくるのかはわからないけれど、ガシガシと頭を掻く川上くんは、とても困っているようだった。

とは言え、わたしにできることなんて何も無い。

そう思っていると。


「……あ、そうだ」

「え?」

「白咲さん」

「は、はい」

「俺に、勉強教えてくんね?」

「……え?」


あまりに突然すぎる提案に、わたしは目を丸くして立ち止まる。

気が付けばもう教室の前に来ていて、みんな噂を聞いたのか川上くんを避けるように教室の後ろの方に溜まっていた。

そんなことも気にならないほど、わたしは衝撃を受けて川上くんを見上げる。


「確か、白咲さんってめちゃくちゃ成績良かったよな?この間の試験の時も名前張り出されてたし」

「な、なんで知って……」

「いや、さすがにあれだけデカデカと張り出されたら目に入るだろ。クラスも書いてあったし。まぁ、あの白咲さんと今目の前にいる白咲さんが一致したのはついさっきだけど」


そりゃあ、期末テストの結果は廊下に大きく張り出されていたけれど。

だからって、川上くんがそれを見ているとは思わなかった。

しかも、ただ同じクラスというだけで全く関わりのないわたしの名前があることを知っていただなんて。