氷柱と春樹付き合ったってよ。
 一緒に帰路に就いていた幼馴染のひまりが急にそう、言った。
 それを聞いた瞬間、私の世界は灰色に染まり、頬になにか冷たいものが伝った感覚がした。
 おかしいな、桜はもう散ってしまったというのに。
 葉山氷柱(はやま つらら)
 学年一可愛くて、頭も良くて運動神経抜群、お前に性格も本当にいい完璧な女の子。
 春樹。坂本春樹(さかもと はるき)
 私の「元」親友だった人。
 「俺達一生親友でいような!」なんて言っていた癖に、中学2年生の春。私達は縁を切った。
 原因は私が春樹に恋心を抱いてしまったことだった。
 縁を切ってすぐは、私は死のうかと思うくらいショックだった。
 それからもう1年、流石にもう忘れていたと思っていた。いや、思っていたかった。
 私はその場に泣き崩れてしまった。
 「嘘つき」
 呼吸の仕方を忘れたみたいに、息が上手くできない。
 春樹のたくさんの思い出が次々と涙と共にあふれてくる。
 私はひまりに背中をさすってもらい、なんとか落ち着くことが出来た。
 心配だから、とひまりが私の家の前まで送ってくれた。
 「ごめんね。迷惑かけて」と私が謝ると、ひまりは可愛い顔をしかめた。
 「ううん。私こそ無神経なこと言ってごめんね。」
 「ううん。私ももう諦めたー!なんて言って嘘ついてごめん。」
 私達はこのままでは、お互い永遠に謝り続けると思い、手を振り解散した。