「どうした?」
 皆上くんが足を止めて、私にふり返る。
「自分でもよく分からないの。どんどん気持ちがあふれてきて……だけど、それをどう伝えればいいのか、うまく言葉にできないんだ」
 胸がいっぱいで、なんだかきゅうっとなって、どうしようもなくて――。
「頭のいい碧葉でも分からないことがあるんだ?」
 ニヤニヤしながら歩み寄ってくる皆上くんに、私はついムキになって、
「そうだよ、こんな気持ちになったのなんてはじめてなんだから……!」
 と、言い返したとたん。
 ギュッ、と皆上くんに抱きしめられた。
「その答えを出すのは急がなくてもいいから。それまでじっくり頭を悩ませといてよ。碧葉からステキな正解聞くの、楽しみにしてる」
 あたたかいぬくもりに包まれていると、自然に目には涙がにじんで。
 ひとりでは分からなかった、今までは知らなかった感情がやさしい波のように押し寄せてくる。
 あぁ、そっか……私、今まで大まちがいしてた。
 ほんとうは、順番もなにもないんだ。
 知り合ったばかりだとか、何回デートしたとか、そんなのは一切関係なくて。
 理由なんてよく分からないけど、うまく伝えられないけど、今、こうして少しでも長くいっしょにいたいと、心の底から願ってる。
 それが、恋のはじまりなんだ。