「皆上くんはすごいよね、もう自分のやりたいことが見つかってて」
 バス停までの道を歩きながら、私はポツリとつぶやいた。
「碧葉だって、医学部進学って目標があるじゃん」
「だけど、それは、半分は両親に言われてのことだから……」
 正直、迷うこともある。
 一生けん命勉強してるのは、ほんとうに自分の意志なのかなって。
 親の期待に応えたいだけじゃないかなって。
 まっすぐに自分のやりたいことに向かって行く皆上くんのほうが、私なんかよりもよっぽど――。
「だけどオレ、碧葉みたいになれたらな、って思ってた時期あったけどな」
 えぇっ!?
 予想もしてなかった言葉に、すっかり面食らってしまった。
 皆上くんが私みたいに???
「ぜってームリだから、早々にあきらめたけど。碧葉はすごいじゃん、いっつもクラス委員長としてクラスのいろんな行事まとめたり、授業中もマジメに先生の話聞いてるし」
「でも、マジメってあんまりイメージよくないよね?」
 ダサいって言われたり、ガリベンだってバカにされたり、マイナスなことも多いんだけど……。
 少し凹み気味の私に、皆上くんはニッと目を細めて、
「でも、オレはそんな碧葉にあこがれてるけどね。たまに居眠りから目が覚めると、しっかり黒板に向かってる碧葉の姿見るのが好きだったんだ」