「『居眠り王子』に、意外なところがあって驚いた?」
 不意に胸のうちを読み取られて、顔が赤くなる。
「そ、そんなことはっ!」
「碧葉、こないだオレに話してくれただろ? だから、オレも打ち明けたくなったんだ。今まで誰かに教えたことのない、自分のこと」
 と、皆上くんはコーラを口にした。
 おかしいな。皆上くんとは毎日教室でいっしょにいるはずなのに、今私の目の前の皆上くんはまったくの別人みたい。今までに見たことのない表情をどんどん見せてくる。
 学校とは別のところで会ってるから? 今が夜だから?
 こうしてふたりで向き合って話すことなんて、今までなかったからかな?
 そんなふうにグルグル頭を悩ませてたら、
「なんか、こういうのってデートみたいじゃない?」
 って、皆上くんが口にしたものだから目が点になっちゃった。
 冗談だよね、きっとからかわれてるんだ。
 こうやって話すようになったんだってつい最近だよ?
 それに私、まだ恋なんて一度もしたことないし。
 それなのに、デートなんて、順番がちがいすぎるよ。

「そろそろ十時すぎるな。帰りのバスの時間、大丈夫?」
 皆上くんに声をかけられて、ハッとわれに返る。
「そうだ、そろそろ出なくちゃ」
 もう、そんなに経ってたんだ。時間のこと忘れちゃってた。
「じゃあ、バス停まで送ってくよ」
「ありがとう……」
 やっぱり胸の奥がどこかさわがしくなってる。
 だけど、それがなんなのかうまく説明がつかない。
 分からない。分からない。今日の私はどこかおかしい。
 さっきまで、何時間も、たくさん勉強してきたはずなのに。