晩餐を始めようか

「なんで連絡してこなかったんだよ。」
私と渡辺さん、いや、裕斗は裕斗の最寄りの駅の近くの喫茶店に入った。
堅治は残業っぽいし、まだスーパーに寄らなくても時間はあるだろう。
昔話という拷問が、私たちの間で繰り広げられていた。
「いやだって、高校違うし、彼氏いたし、裕斗も彼女普通にできたならする必要もないかなって。」
「俺、お前のこと結構プロレス仲間で話すの楽しかったんだけど。急に連絡が途絶えてまじで悲しかったわー。」
わざとらしい嘘泣きに少しイラッとくる。
大前提として、私はこの人に振られたのだ。
そこを忘れてはいけない。
そもそもこの人がおかしい。
振った相手と趣味があったから仲良くしようなんて、そんな自分だけふっきれたみたいに。
「別に、友達が1人減ったくらいでしょ。」
私が素っ気なく返すと、裕斗は顔を歪めた。
「なんでそういうこと言うんだよ。俺は結構寂しかったのに。」
この人の、こういうところは嫌いだ。