クローン人間の僕と人間の彼女

俺は早めに家に帰り、入院の準備を始める。

検査をしなくても、間違いなく癌だ。

分からないのは癌の場所だけ…。




「で、土地の方は上手く行きそう?」


入院準備を手伝いに来てくれた、功太が言った。


「まぁ…、もう少しかかるけど、大丈夫だよ。多分」


朋への罪悪感からか、言葉が濁る…。


「ふ~ん…。厄介な女だな」

「…まぁな」

「じゃあ、俺が……」

「…?」

「いや、何でも無いよ。じゃあ、又見舞いに行くから」


そう言って、功太は帰って行った。


家で一人になった俺は、少しの恐怖と孤独に襲われる…。

何度手術を受けても、入院する前の日は嫌なものだ。

こんな時はいつも、お袋の存在がどれだけ大きかったかを、思い知らされる…。


そんな事より、問題は金だ。

仕事をしていない俺は、生活費も親父とお袋が遺してくれた、通帳のお金を使っている。


そのお金も…。
今度の手術で確実に500万を切る。

後2年近くの月日があるというのに……。


このままでは、その前に金が尽きてしまう。

会社が出来て利益が出るのが先か、金が底を尽きるのが先か…。

誰にも分からない。