部屋を出ると、俺は会社の壁を思い切り蹴った。


俺が何をした?
お前ら人間が俺を造り出したんだ!

後5年で何が悪い?

アイツらは、俺がクローンだという事以外、何も聞かなかった…。

こんな会社、潰れろよっ!

帰りのバスに乗ると、怒りが少し収まった。

もしかして、全ての会社が俺を受け入れてくれないんじゃないのか……?

来る時の緊張感とは全く別の、暗い不安に襲われる…。

家に帰ると、お袋が優しく出迎えてくれた。


「お帰り。面接はどうだった?」

「…俺の顔色を見れば分かるだろ?」

「…大丈夫よ。お父さんだって今の会社に決まるまでは、何回も落ちたのよ?」


お袋は人の気も知らないで笑っていた。


「何がそんなに楽しいの?」

「嬉しいのよ。頑張ってるけんちゃんを見るの、久し振りだから」

「……バカじゃねぇの?」

「又、次を頑張ればいいわ」


”俺と親父は違うんだ!クローンというだけで落とされたのに、何を頑張るんだ?”


そう言ってやりたかったけど、少しだけお袋が可哀想な気がしたから、やめた……。


「ちょっと功太んとこに行って来るわ」

「余り遅くなったらダメよ?」

「分かってるよ」