クローン人間の僕と人間の彼女

「いえ、いいんです。誰が同じ立場でも、そうでしょうから…」

「……」


ーガチャ

二人の沈黙を壊すようにドアが開いた。

そこには、あの二階に居た、色白で黒髪の女が立っていた。


「朋っ…。どうしたの?」

「私、この人とだったら外に出掛けてもいいわ」

「……。聞いてみるから、今は部屋に居なさい」

「フン。いつもは部屋から出ろって煩いくせにっ」


朋は部屋を出て、思い切りドアを閉めた。


「彼女は…?」

「娘の朋です。もう25歳にもなるのに、学校に行く訳でも働くわけでもなく…」

「大変ですね」

「ええ。もうどうしたら良いのか分からなくて…」

「原因は…?」

「分からないの。20歳くらい迄は凄く優しい、いい子だったのに突然変わったわ」

「…彼女の中で何かあったんでしょうね」

「……。あの子の事、頼んでも良いかしら?」

「…僕に…ですか?」

「ええ。もし、あの子が元に戻ったら、あの土地を譲ってもいいわ」

「…本当ですか?」

「勿論よ」

「でも僕は…。いや、分かりました」

「お願いね」


伊集院との契約が成立した。
あの子を元に戻せるかは分からない。