クローン人間の僕と人間の彼女

「はい。あっ、いえ…」


俺は健治であって、健二ではない…。


「あっ、ごめんなさい。そんなはずないものね」


そう言って、伊集院は恥ずかしそうに笑った。

俺達は伊集院に案内され、応接間に向かう。

応接間に入りソファーに座ると、伊集院は俺をチラチラと見る。


「何か付いてますか?」


笑顔で俺は言う。
何で伊集院さんが見ているのか…。
そんな事、俺は分かっている。


「いえ…。昔の恋人に似ているもので」

「僕がですか?」

「はい」


近藤が俺に目で合図する。


「実は僕…クローンなんです。森本健二の」

「……!健二さんの?」

「はい。…恋人だったんですか?」

「……はい」


伊集院は動揺しているようだった。

女はこういった、ちょっとした偶然をすぐに運命だと思う生き物だ。

少し色が付いた空気を見て、近藤が言った。


「今日は僕、帰ります。お二人はご縁があるみたいだし、邪魔者は退散しますよ」

「そんな事…」


近藤は”縁”という言葉を使い、止めを刺して帰って行った。

俺と伊集院の間に変な空気が流れる。


「ごめんなさい。ちょっと昔を思い出しちゃって…」