そして、貯金残高は600万円を切っていた。

手紙はお袋の病気が分かった時に書いたらしく、このお金で治療をするようにと書かれている。

通帳と手紙を小箱にしまうと、俺は写真を眺めていた。

当たり前だけど、俺にそっくりで、俺であって俺じゃない健二…。


その隣で幸せそうに笑っている、髪の長い色白の、品のある奇麗な人…。


30年近く前の写真に、不思議な気持ちになった。


「健二はバカだ…」


こんな人達を置いて、逝っちまうんだから…。

俺は写真を小さく切って、何となく財布の中に入れた。