クローン人間の僕と人間の彼女

俺は家であった、お袋とのやり取りをマスターに話した。


「何で最後までちゃんと話を聞かなかったの?」

「聞きたくなかった。お袋は俺を一人の人間として見てないんだぜ?」

「……。そんな事ないだろう。うちの娘もクローンでね…」

「…マスターんちも?」

「あぁ。クローンでも、言動まで全てが同じじゃない。それは娘が赤ちゃんの時に気付いたよ」

「……」

「お母さんは、君にちゃんとして欲しかったんじゃないのか?君には、その能力もあるんだと…」

「……」

「今日は俺が奢るから、もう帰りなさい。お母さん、心配してるよ?」


マスターに言われるがまま家に帰ると…

お袋は俺の食べ掛けのご飯にラップをして、座ったままテーブルで眠っていた。

俺はいつも家を飛び出すと、次の日の夜迄帰らなかった。

いつも、こうやって俺を待っていてくれたのか?


「…ごめんな」


俺はご飯を食べると、お袋に薄い毛布を掛けた。


「……けんちゃん?」

「ごめん、起こした?」

「さっきはごめんなさいね…」

「いいよ。俺、これからはちゃんとするから」

「?」

「もう心配かけないよ」


そう言うと、お袋は嬉しそうに笑った…。