クローン人間の僕と人間の彼女

「…死んだ?」

「あぁ。親父もお袋もね」

「そうか…。お代わりもマティーニでいい?」

「あぁ」


それから俺もマスターも話す事無く、俺はマティーニを飲み続けた。


「そのくらいにしときなよ?」

「……。全然酔えないんだ」

「無理に…酔わなくてもいいんじゃない?」

「……俺のせいなんだ…俺のっ!」

「何があったかは知らないけど、そんな風に言ったら、ご両親が悲しむよ?…一番の親不孝って分かるかい?」

「……俺みたいな子供だろ?」


マスターは大きく溜息を吐いた。


「一番の親不孝は、親より先に死ぬことだ…」

「……?」

「だから、良かったんだよ…。これからだって親孝行は出来る。生きる事だ」


バーから帰ると真っ暗な部屋に明かりを付ける。

部屋の中はお袋と一緒に造った、内職の花でいっぱいだった。
俺は残りの花を造り始める。

俺はあの日の様に、一晩中花を造り、残っていた最後の一本を作り終えると、何とも言えない達成感を感じた。

何でも中途半端にやり残して来た俺が、初めてやり遂げた事だった。


何か分からないけど、いい気分だ…。