クローン人間の僕と人間の彼女

俺は暗闇に突き落とされた気持ちになった…。


もしかして…
親父が治療を拒んだのも俺のせいなのか?

俺さえ居なければ…
親父もお袋もまだ生きていたかもしれないのに…。


俺さえ居なければっ!!

呆然とする俺に、医者が言った。


「だから貴方は生きないといけない。お母さんの為にも、頑張って治療を続けましょう」

「……はい」


親父もお袋も亡くなった今、俺は一人で病気と闘わなければいけない怖さと、俺だけが生きている罪悪感で、いっぱいだった。

俺はこの先どうすればいいんだ…?

葬儀を終え、近藤と功太が帰ると、当たり前だけど俺は一人ぼっちになった。

俺しか居ない家は静かすぎる程静かで、余計な事ばかり考える。


久し振りに顔を出すか…。

俺はバーに向かった。


「いらっしゃい。あれ?随分と久し振りだね」


マスターはそう言って笑った。


「最近色々と忙しかったからな…」

「何飲む?」

「…マティーニ」

「何?家で何かあったの?」


マスターは、こんなに久し振りでも、俺の癖を覚えているみたいだ。


「死んだんだ…」


そう言って俺は、マスターに差し出されたマティーニを飲み干した。