クローン人間の僕と人間の彼女

「悪いけど君の事は全部調べたよ。あんな手紙貰うと、無視は出来ない。でも、どんな奴かは調べないと怖いからね…」

「…やっぱり速水さんも変えたいんですね」

「……俺は子供の頃から水の中だ。毎日泳いで、世界記録を出そうが、称えられるのは俺じゃない。速水由宇人だ。もし水泳を辞めたらどうなると思う?」

「……」

「俺みたいなクローンはビクビクしてるよ…みんな」

「じゃあ、融資のお願いは出来ますか?」

「悪いけど、俺には自由になる金は無い。でも一つだけ方法がある」

「…方法?」

「あぁ。マスコミにバレると厄介だから言わないが…多分大丈夫だ」

「ありがとうございます!」

「でも、一つだけ条件がある…」

「条件?」

「会社創立が成功したら…。俺達を雇えよ!」

「勿論です!」


俺と速水は笑って、ガッチリと握手をした。


「じゃあ、俺、練習があるから戻るわ」

「ありがとうございました」


玄関まで見送ると、速水は右手を上げ、振り向く事無く立ち去った。

これで、融資も上手く行くだろう…。

俺達の会社創立に向け、本格的に動き始めた。