クローン人間の僕と人間の彼女

さて、俺もたまには早く帰るか…。
父も母も、もう75歳だ。
あんな親でも俺の親には変わりない。


「ただいま」

「お帰えり。ご飯、食べる?」

「あぁ。親父は?」

「老人会の人達と旅行に行ったわ」

「お袋は行かねぇの?」

「貴方が心配だもの…」

「バッカしゃねぇの?」


俺はそう言いながらも嬉しかった。


「あのね、けんちゃん…。ちゃんと仕事に就かない?」

「?」

「うちのけんちゃんは、優秀でエリートだったのよ。だから貴方もちゃんと…」

「何だよそれ?!俺は俺だ!それに、どうせ後5年で死ぬんだよっ」

「違うのよ、最後まで話を聞いて?」

「…もう沢山だ」


俺は食べ掛けのご飯をそのままにして、家を出ると、いつものバーに向かった。


「いらっしゃい。今日は一人?」

「あぁ」

「…何かあったの?」

「別に…。マティーニちょうだい」

「…家で何かあったんだね」


マスターは少し笑って、マティーニを作り始めた。


「…分かるの?」

「そりゃあ分かるよ。もう5年の付き合いなんだから。家で何かあると、必ずマティーニを頼む」

「…そうだっけ?」

「はい、マティーニね。で、何があったの?」