クローン人間の僕と人間の彼女

会社創立の話は一向に実現されないまま、俺は月に一回の検査に行く…。


「胃に黒い陰が見えますね…」

「えっ?」


俺は耳を疑った。
この前の手術で、終わったんじゃないのか?


「どうしてでしょうか?」


不安そうにお袋が聞いた。


「もしかするとですが…。健二くんが持っていた全ての癌を、一緒に受け継いでしまったのかもしれません」


医者は暗い顔で言い、俺は言葉を失う…。


身体中に転移していた健二の癌が?

一つずつ、治していくなんて可能なのか?

それでも、お袋は言った


「…全部治して下さい」



と…。


入院の支度の為、家に帰った俺は無口だった。


「大丈夫!一つずつ治していけばいいんだから」

「そんな事して…金はいくらかかるんだよっ!」


そう、俺は生命保険に入っていない…。


「けんちゃんは、お金の事なんて気にしなくてもいいのよ」


お袋はニッコリと笑って言った。


「少し様子を見て、本当に全部悪くなるようだったら、会社は辞めなさい…」

「生活出来ないだろ?」

「年金もあるし…。もし足りないようだったら、お母さん働くから。治す事だけを考えなさい」

「…お袋に無理させてまで治したくねぇよ…」