クローン人間の僕と人間の彼女

【速水海選手は20年前世界記録を作った、速水由宇人選手のクローンですからね。それ以上の練習をして来た彼には、もっと凄い記録が期待できるでしょう】

【そうですね】

【今度のオリンピック出場濃厚選手は、クローンが9割を占めてますから…】


俺はテレビを消した。

奴らは同じクローンでも、俺達とは違う。

才能を持ち、日本中からの期待を背負って誕生したクローンだ。

今、俺が置かれてる現状比べると、虚しさが沸く…。


「けんちゃん、手術は明日ね」

「あぁ」

「頑張るのよ」


傍で俺の様子を見ていたお袋がそう言った。

明日か…

手術は簡単らしく、命の危険は殆ど無いらしい。

成功すれば、もう大丈夫なはずだ。



ー翌日

手術は無事成功し、お袋は泣いた。


健二が亡くなる前、もう治らないと分かっていて付き添っていたお袋は、今の俺と、その時の情景がダブっているのかもしれない。


「手術は成功しましたが、念の為毎月検査はして下さい。それから一つ気になっていたのですが…。

「何でしょう?」

「身体の痣は…?」

「……」

「病院では、警察に報告する義務があるんで…」