クローン人間の僕と人間の彼女

そう、俺は生命保険には入れない。
病死した人間のクローンだからだ。
大きい病気になる事が分かっているから、生命保険には入れなかった…。


一ケ月後か…。
病気になるのが分かっているのは、ある意味助かる。

俺は健二の寿命を越える事が出来るだろうか…?


病院を後にし、俺は初めてお袋に聞いた。


「健二ってどんな奴だった?」

「健二?…凄く優しくて頑張り屋さんだったわよ」

「ふ~ん…。彼女とか…居なかったの?」

「…居たわよ。婚約しててね、健二が死んだ時、可哀想なくらい泣いてたわ…。何してるのかしらね…」


俺の過去を聞いている様な、変な気持ちだった。


俺だけど俺じゃない奴の人生…。


健二は幸せだったのだろうか?


幸せ…だったらいいな。


「どうしたの?急に健二の事なんか聞いたりして」

「何となく」

「けんちゃんも、素敵な人が見付かるといいわね」

「…俺は無理だよ」

「そんな事ないわよ。中には近藤さんみたいな人も居るんだから」

「…そうだな」

「素敵な人、見付けたら教えてね」

「はいはい」



お袋はそう言うけど、俺が見て来た女の中には、そんな奴、居なかったよ。