クローン人間の僕と人間の彼女

「クローン嫌いの社長が、”クローンの弟を殺せる男”だと気に入って、声を掛けたんだよ。社長はそれしか知らねぇから。何で働きだしたのかは知らねぇよ?」

「……」

「でもアイツ言ってたよ。クローンを助けたいんだって」


俺も功太も言葉が出なかった。


「まぁ、俺は人間とかクローンとか、どうでもいいから。いいんだけどさ…。ちょっと気になってたから」

「…それを教えてくれる為に、旅行に行かなかったんですか?」

「寝坊しただけさ。悪いな、引き止めて。帰っていいぞ」

「ありがとうございました」


俺と功太は大林にペコリと頭を下げて、急いで会社を出た。

俺だって…早く死にたいと思っていた。

身内を亡くす辛さは痛いほど分かる…。

俺は、あの時親父が

”辛いから殺してくれ”

そう言ってたら、親父を殺せたか?


……いや、俺には出来ない。


近藤はどんだけ辛かったんだ?


それを俺は……

俺は近藤に電話した。


「はい」

「…森本です」

「おぅ、どうした?何かあったか?」

「いえ…。今から会えますか?」

「あー…、いいよ」

「じゃあ、初めて三人で話したレストランで…」