クローン人間の僕と人間の彼女


「本当に嫌な奴らだ…」


ボソッと功太が言った。


「まぁ、いいんじゃね?アイツらと1泊2日する方が地獄だろ?」

「そうだな」

「アイツらが居ないと思うと、気が楽だな!」

「あぁ!」


俺達は近藤の話は一切しなかった。

一瞬の夢が、俺達にとってどれだけ大きかったか…。

どれだけ求めていたか…。

夢が夢で終わった時、夢に向かって頑張ろうとしていた自分に、虚しさしか残らない。


きっと功太も同じ気持ちなんだ。


だからもう、
俺は夢なんて見ない…






アイツらが社員旅行に行っていて、会社に居ないと思うと、会社に向かう足は軽快だ。


他のクローンの奴らも、みんなそうだった。


「じゃあ、仕事を始めようぜ!」


俺達は黙々と掃除をする。
普段の緊張感から解放されても、黙って仕事をする事は身体に植え付けられてる。


ーガチャッ


仕事が始まって1時間経った時、ドアが開いた…。

みんなは一斉に注目する。

そこに立っていたのは、監視役の中の一人。
大林という男だった…。


俺達の中に緊張感が走り、重い空気が流れる。


何しに来たんだよ…?