クローン人間の僕と人間の彼女

「けんちゃんもシャワーを浴びたら?」

「あぁ」


俺は風呂場に向かい、シャワーを浴びながら想像する。

藍の拒絶する顔を…


「けんちゃん、まだ~?」


シャワーを止めて身体を拭き、タオルを腰に巻くと、部屋に向かった。


「けんちゃん遅いっ!」


バスタオル一枚で、藍は俺の元へと来る。


藍はどう反応する?


俺の頭の中には、それしかなかった。


藍は俺に抱き着くと、無口になる。

藍は今、どんな顔をしてる…?


予想通りだ



「…貴方、クローンだったのね…?」


藍の顔は凍り付いている。


「そのつもりで来たんだろ?」


藍は俺を思い切り突き飛ばして言った。


「近寄らないでっ!気持ち悪いっ」


急いで服を着て、部屋を飛び出す藍を見て俺は笑った。

鏡に映る俺の背中には、生まれた時刻印された


”クローン”


の記号が印されている…


数十年前、クローン人間と人間の間で子供を作ると、顔のない子供が生まれると噂され始めた。


噂は国中に流れ、テレビでは偉い学者が否定した。

でも、人間の殆どが、今でもその噂を信じてる。


実際、俺が知っているクローンの奴らに、家庭を持っている奴は一人もいない…。