クローン人間の僕と人間の彼女

親父の葬式が終わると、お袋が言った。


「お父さんね、けんちゃんを誕生させた事を、ずっと後悔していたのよ」

「……」

「あの時はただ…健二が亡くなった事が本当にショックで、けんちゃんは私達の希望だった…」

「……」

「でも、思った以上に周りの目は普通じゃなくて…、”俺達の勝手で健治に辛い思いをさせてる”ってね…」

「……」

「”俺達が先に死んで、健治が職に就けなかったら、健治はどうやって生きて行くんだ?”ってよく嘆いてたの」

「…親父が?」

「だから、仕事に対して凄く厳しかったのよ…」


そう言ってお袋はニッコリと笑った。


「明日から又、仕事を頑張るよ…」

「そうね、お父さんも喜ぶわ」


俺はもう二度と、俺を誕生させた両親を憎む事はないだろう。

大切な人の死はとても辛く、相手を大切だとか愛おしいとか思う気持ちが、強ければ強い程…

それが例えクローンであっても、傍に置きたいと思うものだと解ったから。


そして、それを後悔する気持ちも、クローンの俺を想う気持ちがあるからなんだと…。


例え両親しか俺の存在を認めてくれなくても、救われた気がした…。