クローン人間の僕と人間の彼女

「けんちゃんっ!今電話しようと思って…」


パニックになっているお袋に、いつもと違う事が起こっていると感じた俺は、急いで病室に向かった。


「親父っ!」


呼吸器を付けられた、親父のすぐ傍には医者が居て、慌ただしく看護師が動いている。

…何が起こっているんだ?

俺が親父の傍に行くと、暗い顔をして医者が言った。


「…最後になると思います」


俺は医者を無視して親父を呼んだ。


「親父っ!」


親父は苦しそうにソッと目を開ける。


「苦しいのか?」


親父は何か言いたそうな顔をして、ジッと俺を見た。

俺はさっき買ったプレゼントを取り出し、奇麗にラッピングされた紙をグシャグシャに破って開け、親父に見せて言った。


「今日、生まれて初めて給料を貰ったんだ!これを被って釣りにでも行ってくれよっ。これから暑くなるしっ…」


親父は必死に呼吸器を外し、俺が持っている帽子を握りしめる。


「ありが…とう…」


親父の最後の、言葉だった……。


「親父っ…!」


俺とお袋は泣き崩れ

でも、親父だけは穏やかな顔をしていた…


それはまるで、ただ眠っているようで……