クローン人間の僕と人間の彼女

「よし、上がっていいぞ」


監視役の一人の声で仕事は終わる。

誰一人、喋る元気も無かった。

帰りの車で、功太に言う。


「あそこは…地獄だな…」

「あぁ…」

「よく一人で頑張ってたな…」

「…健治が来るのを知ってたからな」

「今日聞いたのか?」

「いや、俺があそこに配属されて少しして…今岡って奴が言ってた…」

「……」


そうか…今岡は俺を初めからB4に配属するつもりだったのか…。

近藤との小さな野望も、ただの夢物語だったのか…。

疲れと絶望しかない俺達は、何も話す事も無かった…。



それでも俺達は毎日仕事に行く。

ここを辞めたら、他に行く当てが無いから…。


俺は仕事が終わると、毎日親父のお見舞いに行き、そして親父は仕事の話しを聞く。


「仕事は覚えたか?」

「あぁ。覚えが早いって褒められたよ」

「そうか、そうか。頑張るんだぞ」


毎日、段ボールを運んでいるだけなんて、親父に言える訳がなく


俺が付く小さな嘘も、親父は信じて嬉しそうに笑ってくれた。


そんな親父も、少しずつ痩せて行き、小さくなった気がした。


最近は自分では殆ど食べる事も出来なくて、点滴に繋がれ、口数も少ない…。