「……」
涙を堪えて仕事を続けようとした俺に、近藤は言った。
「バカ、仕事なんていいから行って来い!」
「おい、近藤!勝手な事を言うんじゃない!!」
「……お前、俺の前科を忘れたのか?」
「……」
「ほら、早く行けっ!」
「すみませんっ」
俺は走って駐車場に行き、お袋に電話して病院を聞くと、車を飛ばして病院に駆け付けた。
病院のベッドには、気持ち良さそうに眠る親父の姿と、心配そうに見守るお袋の姿があった。
「…けんちゃん」
「親父…大丈夫かよ?」
その時、寝ていたはずの親父が、目を閉じたまま俺に言った…。
「何しに来た?」
「えっ…」
「…仕事はどうしたんだ?」
「それどころじゃないだろ?」
「俺が倒れたくらいで、仕事を投げて来てどうする?」
「…でもっ」
「いいから仕事に戻れ」
そう言う親父の目から、涙が溢れていた…。
「…分かったよ」
俺は病室を後にした。
親父、何でだよ?
仕事より…親父の方が大事だと思う俺の気持ちは、間違っているのか?
俺には、親父の気持ちが解らない…。
俺は会社に戻らないで、家に帰った。


