クローン人間の僕と人間の彼女

仕事を終え、功太を待った。

功太は一時間くらいして現れ、俺の車に駆け寄ると笑顔を見せる。


「悪い悪い!みんな仕事がトロイからさぁ」

「……」


俺は車に乗り込んだ功太の作業着を、捲った。

功太の腕は数か所、赤く腫れあがっていた…。


「…何で何も言わないんだ?辛いなら一緒に辞めてもいいんだぜ?」

「……。健治がやっと見付けた会社だろ?俺一人がすぐに辞めたら、健治の顔に泥を塗るだけじゃん」

「……!そんな事、どうでもいいよっ!」

「それだけじゃないんだ…。俺が働きだしてババァが嬉しそうだから…」


功太が悲しそうに笑う顔が、凄く辛かった。


「それに俺…ここしか働く所が無いだろ?だから辞めらんねぇ…」

「…ごめんな」

「…健治が謝んなよ」


その後の俺達は無口だった。

俺達に対する社会の差別は、生きている限り永遠に続く…。

それを完全に悟ってしまった。

やっと就職して、抜け出したと思ったトンネルは長く続き、それは果てしない物だという現実を、目の当たりにした。

例えクローンが滅びても、人間が滅びる事のないこの世界は、俺達にとって地獄だ……。