クローン人間の僕と人間の彼女

目を真っ赤に腫らした無口な俺を心配して、功太が聞いた。


「…親父が病気なんだ」

「……そんなに悪いのか?」

「…あぁ」

「そっか…」


功太はそれ以上何も聞かないで、二人は無口なまま会社に着いた。


「俺、又遅くなるかもしんねぇし、先に帰ってていいよ?」

「俺が居なきゃ、帰れないだろ?」

「ババぁに迎えに来て貰うよ」


功太はニッコリ笑う。


「…ごめんな」

「今度、奢れよっ」


功太はそう言って、工場の奥の方に歩いて行った。

俺は作業の準備に取り掛かる。


「おい、B4の事聞いたか?」


近藤がニヤニヤしながら聞いて来た。


「…まだ」

「ふ~ん」


近藤はそう言って居なくなり、俺は仕事を始めた。

親父は後、どれくらい生きられるんだ?

もう帰って来たのか?

仕事とは関係ない、親父の事で頭がいっぱいだった…。


俺はこんな所で何をやってるんだ…。


「森本っ!!」


今岡の怒鳴り声に、身体がビクンとする。


「お前、何やってんだ?!」

「…えっ?」


有り得ない作業ミスを、
俺はしていた…。