「…ご飯作らなきゃね」


お袋は寂しそうに笑った。


「いらねぇよ!」


俺はそのまま、部屋に籠った。

生まれて初めて経験する、家族の死が目の前に来ている。

お袋は何で笑ってられるんだ?

何で親父は病気なのに、俺に配慮なんかしてんだよ?

明日から、親父とどう接すればいいんだ?



俺はただ、
泣くしかなかった……。



「おはよ」


朝起きるとお袋は、一晩中泣いていたのか、目が真っ赤だった。


「親父、今日退院するんだろ?俺、会社休むよ」

「ダメよ」

「?」

「お父さん、けんちゃんの就職を凄く喜んでいたのよ?そんな事で休むなって、お父さん、悲しむわ…」

「……分かったよ」

「しっかり頑張るのよ?」


俺は作業着に着替え、車を走らせる。

今仕事なんか、したくねぇよ…。

それどころじゃないだろ?


それでも功太を迎えに行き、会社に向かう…。


「何かあった?」