クローン人間の僕と人間の彼女

服を着替えて、持っていた服を全部鞄の中に入れる。


最後に…


婚姻届けをビリビリに破って、ゴミ箱の中に捨てた……。


荷物を持って、誰にも見付からないように病院を抜け出すと、何となく少し歩いた。


俺は今から消える。


この見慣れた風景も、街並みも、今日で最後なんだ…。


しっかりと目に焼き付けて、死んでも忘れないように…。


少し生ぬるい風を感じた時、一台の車が俺の横に停まった。


俺が立ち止ると助手席の窓が開き、運転席には功太の笑顔が見えた。


「よっ!行くんだろ?」

「あぁ…」

「乗れよ。俺が連れて行ってやるよ」

「いいよ…」

「前に約束しただろ?その時は俺が連れて行ってやるって…」


功太は寂しそうに笑った。

俺は功太の車に乗り、車はゆっくりと走り出す…。


「何か音楽でも聞こうぜ!」


そう功太が言って、今流行りだという曲を掛けると、俺も功太もハイテンションになった。


何かを吹っ切ったかのように、俺は知らない曲を滅茶苦茶に歌った。