クローン人間の僕と人間の彼女

「ありがとな。安心して休めるよ…。でも無理すんなよ?」


朋は照れ臭そうに笑って、病室を後にした。




それから毎日、朋は仕事が終わると署名活動に出掛けているみたいで、その日会った人の事を話してくれた。


「今日も健治の事聞かれたよ。あの人は居ないの?息子の相談に来たのに…って」

「あー、多分林さんだよ」

「後ね、小さな男の子も来た。泣きながらクローンのお兄ちゃんは?って」

「それはタクヤだろ。又いじめられたのかな…?」

「後ね、おにぎりのお婆ちゃんも!まだ退院しないの?貴女で良かったら食べてちょうだいって」


みんな元気そうだな。
俺は楽しそうに話す朋を見ながら、ただそんな風に思っていた。


「健治って凄いよね!」

「……?」

「私なんか、署名下さいって言うだけでドキドキするのに、あーやって街の人達と仲良くなってるんだもん」

「毎日行ってたら、何か仲良くなってたよ」

「それが簡単に出来ないもんなの。私じゃ役不足みたいだし…早く行けるといいね!」

「そうだな」

「じゃあ、又明日来るね!」


朋はそう言って帰って行った。

俺は不思議な気持ちになった。
居場所なんて無かった俺だから…。
人生なんて変わるもんだ…。