クローン人間の僕と人間の彼女

あれ以来、功太はうちに良く来るようになった。

そんなある日功太が言った。


「今日新人が入ったんだ」

「新人?」

「あぁ。そいつ今迄何やってたと思う?」

「…?」

「谷本で働いてたんだよ。身体中痣だらけだった…」


俺の脳裏に谷本工場の、あの生々しい記憶が甦る…。


「くそっ!相変わらずかよ!!」


俺は壁を思い切り殴った。


「他の奴らを助けたいけど、うちもまだそんな余裕は無いから、近藤さんも頭を抱えてるよ」


その時、朋が言った。


「そんな会社、潰しちゃえば?」


三人の間に沈黙が流れ、俺と功太は笑った。


「何で笑うの?」


朋は不満そうな顔をして言う。


「朋ちゃん、過激だからさぁ」

「そんな事無いよ。ねっ?健治」


そんなやり取りをしながら、俺は考えていた。
谷本を潰す…?

この事で谷本が潰れて、大きくニュースで取り上げられれば、今同じような立場に置かれている奴らも、多少は変わる気がする。


「…健治?」


これが俺の使命なんじゃないのか…?


「ちょっと俺行って来るよ」


俺は二人を残して、文房具屋へと急いだ。