クローン人間の僕と人間の彼女

「よく…来てくれたな」


俺がそう言うと、坂本は深く頭を下げた。


「じゃあ、仕事するぞ」


現場に向かう途中で坂本が言った。


「俺、真面目にやるからさ、病院行ってちゃんと治して貰って来いよ。お前が戻って来た時は、お前より偉くなっててやるよ」

「あぁ…」


何故だか俺は泣きそうになった…。

現場に入ると仕事をしていた皆が、坂本の周りに集まって来て、それぞれが喜んだ。

これから、人が増えていって衝突もあるだろう…。
けど、今居る奴らが居れば大丈夫だ。

何となく、そんな事を考えていた。




仕事が終わり、家に帰ると坂本の事を朋に話す。


「良かったね!坂本さん」


嬉しそうに朋が言い、俺も微笑んだ。


「次の入院が終わったらね、健治に連れて行って欲しい所があるんだ」

「…何処?」

「まだ秘密!」


朋はいつもより楽しそうで、俺はサッパリ分からない…。


「朋、入院の準備、やっておいて」

「うん!」


俺は入院の準備を朋に任せ、仏壇の前に座った。


不安なんだ…。


全てが怖いくらい、上手く行き過ぎて……。

物事が上手くいけば行く程、俺は死に向かって花道を歩いている様な気がする。