クローン人間の僕と人間の彼女

「じゃあ、仕事を始めるか!近藤さん、俺の作業着ありますか?」

「…あぁ。取って来るよ」


静まり返る中、速水が口を開いた。


「厄介…払いかぁ…」

「違うよ。アイツは戻って来るよ…。一度世の中を知った方がいいんだ。速水も…それを知ってるから、ここに来たんだろ?大事な仲間を連れて…」

「あぁ…」

「もしアイツのプライドが邪魔して戻って来れなかったら…その時は俺が頭を下げてでも連れ戻すからさ。とりあえず今は、会社を回転させて軌道に乗せなきゃな。会社が無くなったら、クローンの行き場がなくなるんだ…」


速水達は何も言わないで仕事を始めた。

近藤は俺の作業着を持って来て、速水達の姿を見ながら嬉しそうに笑った。


「じゃあこれに着替えて、暫く頼むよ。坂本が帰って来なかったときには、俺も一緒に頭を下げに行くからな」

「あぁ」


俺は作業着に着替えて、久し振りの仕事を始めた。


ここには殴る奴なんて居ない。


見張ってる奴も居ない。




きっと、坂本って奴も帰って来るよ。