クローン人間の僕と人間の彼女

そう言って近藤に連れて行かれると、そこには険悪なムードの速水達と、功太の姿があった。


「だから何で俺がこんな事をしなきゃいけないんだよ!」

「俺らの仕事はこれなんだよ。いつまでもガタガタ言ってんじゃねぇよ!」

「お前はよくこんな事をやってられるなぁ?」


テレビで見た事がある顔ばかりだ。
さっきから文句を言っている奴が、速水の言っていた癖のある奴か…。

スポットライトを浴びて生きて来た奴には、確かにキツイよな。
でも…。

俺はその中に割って入って言った。


「じゃあいいよ。辞めて」

「何だ?てめぇ…」


現場の空気が凍り付いた。


「健治!来てたのか?」


功太の嬉しそうな顔に、俺は笑顔で頷く。


「…健治?名前だけおいてるお偉いさんか。いいよ、辞めてやるよ」

「お前が居なくなったら、仕事が回らないだろ?!」


速水が言った。


「いいんだ。そいつが抜けた所は俺がやる。お前さぁ…ここ出ても行く所なんか無いぜ?」

「俺はお前らとは出来が違うんだよ」

「それは良かった。でもな、世の中そんなに甘くないんだ。それが分かったら…いつでも帰って来いよ?」

「フン!」


男はムカついた顔をして出て行った…。