クローン人間の僕と人間の彼女

俺は病気との闘いが終わる迄、会社の経ち上げや、会社が立ち上がってからの仕事への参加は、極力減らす事にした。

心の何処かで、死が迫って来ているのを感じていたからだ。

男の癖に格好悪いけど、生活費は朋の収入、手術費は貯金残高が無くなった時点で、伊集院から借りる事になっている…。

そんな時、近藤から電話があった。


「もしもし」

「俺だよ。ちょっと出られるか?」

「大丈夫だけど、何かあったの?」

「まぁ…後で分かるよ」


俺は電話を切ってすぐに服を着替え、少しすると近藤が迎えに来た。

近藤の車に乗ると近藤は無口で、俺がいくら聞いても、


「着いたら分かる」


それしか言わなかった。

そして目的の場所に着いた時、俺は肌が立った。


「やっと完成したよ…」


近藤が眩しそうな目で見る、その先には……。

少し小さいけど、新しい工場の姿があった。

俺達三人の気持ち、速水達クローンの気持ち、伊集院の気持ち…。


それぞれの思いが詰まった、誰が欠けても、きっと出来なかっただろう俺達の会社…。



俺も近藤も黙ったまま、目に涙を溜めて、その姿をジッと見ていた。