朋が俺の家に戻り、入院の費用も伊集院に援助して貰い、会社の創立も順調に進んでいる。

俺は今迄生きてきた中で、一番の幸せを感じていた。

全てが順調に進めば、諦めていた普通の生活も、送る事が出来る。


「健治、ちょっと来て!」


朋が大声で俺を呼ぶ。


「何?」

「このテレビ見て!」


朋が見ていたテレビには、クローンの男と、人間の女、そして……

可愛い子供の姿が映っていた。


「クローンの子供って…世界で初めてなんだって…」

「…」


朋は真剣にテレビを見ていた。


テレビに映る、三人の家族はとても幸せそうで…。

それは、俺達に新しい希望を与えてくれる。


「…私も欲しいな…」


ポツリと朋が言う。


「そうだな。いつか出来るといいな」


そう言って俺は笑うと、朋の頭をポンと叩いた。


「早く欲しいの…」

「結婚してもないし、まだいいだろ?」

「じゃあ、結婚しようよ」


朋は笑顔でそう言ったけど、俺はすぐに二つ返事は出来なかった。

俺の病気が本当に治る迄、結婚なんて出来ない…。

伊集院からの援助がある。

でも、俺は心の奥に不安を感じていた……。