クローン人間の僕と人間の彼女

目を覚ますと、そこには朋の姿があった。


「私、先生呼んで来るっ!」

「…?ちょ、朋っ!?」


朋は俺の声も耳に入らないようで…
慌てて医者を呼びに行った。

ナースコールで呼べばいいのに…。

少しすると、朋は医者を引き連れて戻って来た。


「調子はどう?」

「大丈夫です」


俺はいつもの様に医者に軽く診察をして貰う。


「うん、問題ないね。少しでもおかしいと思う事があったら、すぐにナースコールを押して下さい」

「ありがとうございました」


医者は病室を離れ、朋はナースコールのボタンに釘付けみたいだ。


「もしかして…これを押せば良かった…?」

「うん」

「ひっど~い、先に言ってよ!」


膨れっ面で朋が言う。


「言おうとしたら、行っちゃったからさ」

「いいもん。次からはちゃんとナースコールを押すから」


朋はツンとした顔でプイっとして笑った。

”次はちゃんとナースコールを押すから”


か……。


嬉しいはずの朋の言葉は、俺の胸を突き刺す……。


「どうしたの…?」

「…朋に出来るかな?って思ってさ」

「出来るよっ」


俺と朋は笑っていたけど、二人の間に流れた空気を、朋も感じていると思った。


二人の間に未来は無い…。