クローン人間の僕と人間の彼女

それから朋は毎日お弁当を持って病院に通い、たまに功太が来ると、気を利かせて帰って行く。

手術の前日、功太が来た。


「今日も彼女、弁当箱を持ってたな」

「……」

「…どうするんだ?」

「俺、やっぱり言えねぇ…。退院したら、もう連絡はしないよ…」

「健治が思うようにすればいいよ」


功太はそう言って少し笑った。


「あぁ…」

「明日、手術頑張れよ。お前が退院したら、会社創立に向けて本格的にやるらしいから」

「そっかぁ」


これから会社創立に向けて、頑張るか…。

朋の事を忘れるくらい……。


手術前日、俺の骨髄は造られた。

そして、朋は手術前に病室に現れ心配そうな顔をする…。


「大丈夫ですよ。森本さんの細胞で造った骨髄です。身体の拒否反応も
ありませんから」

「お願いします」


朋は深々と医者に頭を下げて、俺に言った。


「ちゃんと帰って来てね」

「…?当たり前だろ」


俺は手術室に運ばれながら思った。

俺を待ってくれている奴が居るんだと…。


俺は手術が終わった後、どうすればいいんだ?

朋との関係をどうすればいいんだ?


なぁ、お袋、教えてくれよ…。


そして、いつもの様に麻酔を掛けられ、俺は眠った…。