クローン人間の僕と人間の彼女

「付き合っているのかい?」

「…いえ」


俯いて俺が答えると、おじさんは言った」


「それがいいよ…。それが…。クローンと人間が一緒になるのは大変だ。傷付くのは当人同士さ…」


おじさんも、辛い思い出を持っているんだろう…。
寂しそうな顔をしていた。


「そうですね…」


俺は少しだけ笑って見せた。

それから少しすると、奇麗な花瓶に花を生けて、朋が戻って来た。

朋は立て掛けていた折り畳み式の椅子を開き、チョコンと座ると俺に聞いた。


「食事制限とかあるの?」

「手術の前日迄は無いと思うよ…?」

「じゃあ、お弁当を作って来てもいい?」


”いらない”


そう言えば朋は俺を少しは嫌いになるのか…?


「……」

「迷惑…だったらいいよ」


寂しそうな顔をする朋に、俺はそんな事は言えなかった。


「…いや。嬉しいよ」

「本当?じゃあ、明日から毎日作って来るね!何が好き?」

「何でもいいよ」


嬉しそうに話す朋の顔を見ていると、俺は何も言えない…。

明日嫌われよう…

明日嫌われよう…

そう思いながら、結局、俺は何も出来ないんじゃないのか?



そんな気がしていた…。