少し雨の降る5月。
今日は火曜日だ。

湿気がうざくて、机に突っ伏していると遠くから聞き慣れた足音が聞こえた。

「おーい、イッヌー!!」

「イッヌって呼ぶなヌッコ」

「てめぇにもブーメランだわ埋まりやがれくださいねイッヌ」

「道連れにしてやんよ」


俺、真中 番犬(まなか ばんけん)は、机に突っ伏していた顔をあげて、声をかけてきた、友人の猫原 たもん(ねこはら たもん)に言い返した。


「怖いこと言わないでよワンワン」

「NHKのやつ呼ぶな受信料かかっちまうだろ」

「そーいえばあの番組我らがうーちゃん卒業しちゃったらしいね」

「フル無視かよ、あと著作権心配しすぎてもはや誰かわかんねぇから」

「ごめんごめん、ちょっとワンワンに聞きたいことあってさ」

「緑と白は続行なんかい
なんだよ、真面目に答えんから言ってみろ」

「いや答えねぇのかよワンワン、真面目の使い方間違ってるぞそれ」

「俺はいつでも不真面目だ
で、なに?」

「あぁ、番犬っていつも月曜だけ秒速5kmくらいで帰るじゃん?あれってなんなのかなって」

「さすがに秒速5kmはこえぇよ。
あと誰が猫原になんか教えるか」


そう、俺の月曜の予定は例の書店でお姉さんに会うことだけだ。
それのために生きてると言っても過言ではない。


「なんでだよ教えろくそがき」

「お口が悪うございますよヌッコさん」


猫原なんかに教えるわけがない。
今だけでも俺はお姉さんを独り占めしたいから。


「なーなー教えろってー」

それに俺は今日も書店に寄ろうと思っている。


「なんでだめなんだよー!」

それを下心万全で書店に行っているなどと猫原に知られたら笑われてしまうに違いない。


「そんなに隠すようなことなのか!?」


俺の楽園を汚されてなるものか。

「俺ら友達だろー!?」

「....」
そんな事を考えている間にもうしろで騒いでいる猫原に一発デコピンをかまし、俺はまた突っ伏す姿勢をとった。





シュババババババババ

5限6限が終わって、気になる俺はというと手を追加で6本くらい生やして帰る準備をしている。

なぜなら今日、雨のおかげで部活がなくなったからだ。
僕はバスケ部なのだが今日はちょうど外練予定だったので、部活が中止になってしまった。

そのおかげで今日俺はお姉さんに会いに行ける。