その問いかけにはすぐに答えられなかった。

 そりゃあ昔は好きだったけど……、今はどうなのかわからない。
 もちろん好きは好きだけど、この「好き」が恋なのかどうか――……。


「……」

「っ! ダメだ」

「え?」

「莉茉ちゃんのこと、誰にも渡したくない」

「えっ……」


 顔を上げた瞬間、見たこともない苦しそうな表情をした依蓮くんの顔が間近にあった。

 どうしたの?
 そう尋ねようとしたら、何か柔らかいものに唇を塞がれた。

 気づいた時には依蓮くんの顔が目の前にあって、わたしの唇を塞いでいたのは依蓮くんの唇だった。


――えっ……!?


「ん……っ」


 びっくりしてすぐに離れようとしたけど、グイッと手で頭を押さえられてしまって身動きが取れない。

 依蓮くん、どうして……!?


「や……っ、えれんく……っ」


 なんで?どうして?
 わたしたちは、兄妹じゃないの……?


「……ごめん、本当は俺、莉茉ちゃんのこと妹として見てない」

「え……?」

「ずっと好きだった――一人の女の子として」


 うそ、でしょ……?


「せっかく家族になったのに壊すようなことしたくなくて必死に抑えてたけど、亜蘭に取られるくらいなら……もう兄のままでいたくない」


 初めてあった時から、依蓮くんはとろけるように甘い笑顔で挨拶してくれた。
 一緒に住むようになってからもずっと優しくて、わたしのこと甘やかしてくれる素敵なお兄ちゃんだった。

 でも、今目の前にいる依蓮くんは知らない。
 こんなにビターな表情をしている依蓮くん、初めて見た――。