普段から私は、できるだけ他人(ひと)のいい面を見るように心がけているつもりだ。

しかし、高原については例外だった。そんな心がけも瞬時に忘れそうになった。

少しはいい所があるのかもしれない――そう思ったのは、ほんの何秒か前のことだったが、それを撤回したくなるのは非常に早かった。

高原はわざとらしく大きなため息をついた。壁に寄りかかって頬杖をつくと、私をじっと見た。

「何してたか、とか、わざわざ言わないと駄目なわけ?」

「えっ、いや、その……」

私は口ごもった。

この人、面倒くさい。話しかけるのやめようか――。

私は再び助けを求めるように、今度は高原の友達である前田の方に目をやった。

前田は私の視線に気がついた。彼は私の視線の意味をすぐに察したらしく、高原をちらりと見やった。ところが、前田は助け舟を出すわけでもなく、私に「ごめんね」とでも言いたげな苦笑を見せたきり、かおりとの会話に戻ってしまった。

あなたの友達でしょ――。

そう言いたいのを飲み込んだら、口元がぴくりと引きつりそうになった。なんとか表情を取り繕い、一瞬忘れそうになった笑顔を取り戻す。いったいなんの苦行なのだろうと思いながら、私はぐっとお腹に力を入れると、高原との会話に再び挑んだ。

「えぇと、高原さんと前田さんは、お友達なんですよね?普段からよく一緒に飲んだりするんですか?」