身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~

 耀の身体が結乃から少しだけ離れた。ホッとしたのもつかの間、今度は彼の腕がゆっくり伸びてきた。

「だったら結乃、妻としてきみにしかできないことがある」

 耀の大きな掌が結乃の頬をするりと撫でたかと思うとそのまま顎に添えられた。

 そっと顔を上げられ、見つめ合うような状態になる。

 照明の影になった彼の表情ははっきりとは見えない。でも深い茶色の瞳だけがやけに光を湛えてこちらを射抜いていることは認識できた。

「……耀さん?」

「わかるか?」

 さらに覆いかぶさるようにした彼の顔が近づき、見えなくなる。そして――。

「……ん?」

 耀の唇が結乃のそれに重なっていた。唇の感覚が頭に伝わり、自分が彼とキスをしていることを認識するまで数秒。

 彼は結乃にその現実を知らしめるようにしばらく唇を重ねたまま角度を変えゆっくり動かす。
 最後に少しだけ下唇を食んでから顔を離した。

「こういうことも、もっと先のことも。間違いなく妻である君にしかできないことだ」

「あ、あの……」

(も、もっと先のことってことは、もっと先のことよね……)

 突然のことに思考がおかしくなりつつも、耀の言わんとすることはわかった。