身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~

「美味しかったんですけどねぇ。なぜか秘書室の女性たちに専務と僕がデキてるって誤解されて、噂になりかけたんですよ。ただでさえ僕、うちでは珍しい男性秘書だったから。専務は女除けになるから構わないって言ったけど、僕はいい迷惑ですからって止めてもらいました」

「デキてる……なるほど」

 前に千香子の大学生の娘に『結乃ちゃん読んでみて! 初心者向けだから!』と勧められて借りて読んだ漫画がスーツイケメン同士のオフィスラブものだった。
 あれはせつなくていい話だった。
 
 耀の男らしい端整な顔を思い出し、運転席の湊の柔和な横顔を見る。ふたりのイケメンが並び立つ姿を想像すると……。

「うん。アリです。おふたりお似合いです」

 結乃が前のめりになると湊はハンドルを握りながらブッと吹き出す。

「お似合いって、ほんっと結乃さんって面白い……っていうか、新婚の奥さんにそんな風に言われてる専務って……」
 
 不憫すぎる、と呟きながら涙目になっている。そんなに面白いことを言っただろうか。

「でも、最近専務の雰囲気が柔らかくなった気がするんですよ」

「耀さん、会社ではそんなに厳しい人なんですか? なんとなく予想は付きますけど」