「おはようございます。奥様、お迎えに上がりました」

 今朝も玄関先にスーツ姿の湊が爽やかな笑顔で立っていた。

「おはようございます。今日は私だけなのにすみません」

(奥様って言われるの、未だに慣れないなぁ……)

 結乃は耀と同居を始めてから毎日車で送迎されている。
 朝は湊が運転する車で宇賀地ホールディングスの本社まで行き耀が降り、結乃はそのまま会社まで送られる。

 そうなると、耀は秘書も付けずに一人で執務室に出社することになる。

 立場的にまずくないでしょうかと言っているのだが『俺の妻を満員電車に乗せて通勤させるわけにはいかないだろう』という一言によりこの送迎は習慣化しつつある。

 結乃はほぼ毎日祖母のお見舞いに行っているが、病院からの帰りも湊が迎えに来る。来れない時も必ずタクシーを使うように厳命されている。

「では、耀さん、行ってきます」

 結乃は玄関先に立つ耀に声を掛けた。彼はラフなワイシャツ姿だ。

 今日は結乃だけが湊の運転で出勤する。