「何となく思ったんですけど、おじいさまがあんな突っかかる言い方するのって、少し寂しいんじゃないですかね? 私のおじいちゃんも不器用な人でしたからちょっとだけ似てると思ったんです。親しい人だからこそ素直になれないみたいな」

 大企業の会長と町工場の職人を比べていいのかわからないが『おじいちゃん』というくくりでは結乃の中では同じだ。
 ふたりの性格の根底に似たようなものがある気がしたのだ。

(それに、耀さんもおじいさんに対して素直になれないところがあるのかもしれないな)

 でもそう言ったらもっと彼の口の中の苦虫が増えそうなので言わないでおく。

「一時的でも家族になるのなら仲良くなった方がいいかなって。ほら、その方がポイント上がって耀さん社長になりやすいかもしれません」

「……君は本当におもしろい考え方をするんだな」

「おもしろいですかね?」

「ああ。驚かされる」

 コーヒーでも飲むかと言いながら結乃の頭を撫でた耀の顔には、もう苦いものは浮かんでいなかった。