身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~

 でもそれはあり得ない。
 なんせ彼が次期社長に指名されるまでの期間限定の関係なのだ。実際寝室は別だし、もちろん彼がそんな素振りをみせることはない。

「まあ、焦らないでくださいよ。気長にお待ちください。まだ届けも出していないんですから」
 
 耀は言うと婚姻届を取り出し、源三に署名させた。


「ふぅー、なんだか緊張しました」

 帰宅すると同時に結乃は脱力し溜息をついた。

 あの後少々雑談をした後ふたりは宇賀地家を辞した。

 結乃の手には紙袋に入った高級和洋菓子がいくつも下げられている。
 耀の母が帰りがけあれこれと渡してくれたものだ。
 それらをダイニングテーブルに並べながらつい結乃は心の声を漏らした。

「あのおじいさまと仲良くしなきゃいけないのかぁ……」

「いや、別に仲良くなる必要はない。あの人は昔からああで、だれとでも馴れ合う性格ではないから」

 耀は苦虫を噛み潰したような顔になっている。そんな顔もなぜか整っていてかっこいいから不思議だ。